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福岡地方裁判所 昭和55年(行ウ)8号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

そこで、本件処分について原告主張の違法があるか否かについて判断する。

1 地方税法第六〇二条は、市町村は、土地の所有者が租税特別措置法第六三条第三項第六号の規定に該当する土地等の譲渡をしようとする場合において、市町村長が当該事実を認定したところに基いて定める日から原則として二年を経過するまでの期間内に当該土地を譲渡し、かつ、右の譲渡があつたことについて市町村長の確認を受けたときは、当該土地に係る特別土地保有税に係る徴収金(納税義務の免除に係る期間に係るものに限る。)に係る納税義務を免除するものとすると定めている。

そうして、地方税法施行令第五四条の四五第二項、第五四条の四二によれば、土地の所有者が右の認定を受けようとする場合は、所定の事項を記載した申請書を市町村長に提出してしなければならず、市町村長が当該認定をした場合において、納税義務の免除に係る期間の起算日を定めるときは、当該土地に係る買取りの協議、当該土地に係る事業に係る法令の規定による許可又は計画の承認、当該土地に設置すべき建築物の建築の確認その他客観的な事情に基いて、当該申請書の提出があつた日以後の日を定めなければならないこと、ただし、当該申請書の提出が遅延したことについてやむを得ない事情があると認めるときは、その提出があつた日前の日を定めることができるものと定められていることが明らかである。

したがつて、特例譲渡についての認定申請書が提出された日前に、既に申告納付期限が経過した当該土地に係る特別土地保有税に係る徴収金については、原則として、納税義務の免除を行なうことができず、ただ例外として右申請書の提出が遅延したことについて止むを得ない事情があると認めたときは、納税義務の免除に係る期間の起算日を定めるにあたり、右申請書が提出された日以前の日を起算日として指定することにより、右の免除を行なうことができるものといわなければならない。

2 前記認定によれば、原告は、(一)昭和五二年取得分の保有税、(二)同五三年度の保有税及び(三)同五四年の保有税に係る徴収金について免除を受ける利益を有するところ、特例譲渡についての認定申請書を提出した日(昭和五四年八月二八日)は右各保有税の申告納付期限((一)は昭和五三年二月末日、(二)は同五三年五月三一日、(三)は同五四年五月三一日)の経過後であることが明らかである。したがつて、被告は、原則として、右免除を行なうことができず、ただ例外として、右認定申請書の提出が遅延したことについて、やむを得ない事情があつたと認めたときに限り、右の免除を行なうことができるものといえるから、右遅延について前記条項にいう「やむを得ない事情」があつたか否かについて検討する。

(なお、地方税法施行規則第一六条の二二第四項、第一六条の二〇第一項によれば、特例譲渡についての認定を受けようとする場合は、特例譲渡をしようとした日の属する月の翌翌月の末日までに認定申請書を市町村長に提出しなければならないと定められているが、右の提出期限の定めは、いわゆる訓示規定と解される。)

3 原告は、被告において特別土地保有税の申告や特例譲渡についての申請等に関し、適切な行政指導等を行なう義務があるのにこれを怠つたため、原告は昭和五四年六月ころ、被告から電話による指導を受けて初めての右の申告・申請手続を知り、本件特例譲渡についての認定申請書を提出したものであり、その提出の遅延について前記条項にいう「やむを得ない事情」が存したものである旨主張する。

まず、地方税法施行令第五四条の四二第二項ただし書にいう「やむを得ない事情」とは、原告主張のように地方税法第六〇一条第二項に定める「災害その他やむを得ない理由」に比し、広い概念であり、したがつて、災害その他避けることができない客観的不能の場合に限られるものではないが、申請書を提出するについて申請者の社会的地位などからみて通常要求される程度の注意を払つたとしても、なお右提出の遅延を避けることが不可能であつたと認められる場合を指すものと解するのが相当である。

ところで、原告が宅地造成、建物建築、分譲、販売を業とする株式会社であることは、前記一で認定のとおりであるところ、特別土地保有税の制度は昭和四八年度の税制改正において、当時社会的問題となつていた土地の買占めとこれに伴う地価の高騰などに対処するため創設されたものであることは広く知られていたことを合わせ考えると、原告は遅くとも本件特例譲渡についての認定申請書を提出した前記昭和五四年八月二八日以前のかなりの早い時期において、原告主張の行政指導などが行なわれたと否とにかかわりなく、特別土地保有税に係る申告手続及び納税義務の免除に関する手続について相応の知識を有することが当然要求されていたものというべきである。

のみならず、<証拠>を総合すれば、被告や北九州市は、昭和四九年から同五三年にかけ、数回にわたり特別土地保有税についての説明会を開催し、また、昭和五二年以降は同税についての概要、同税に係る申告及び納税義務の免除に関する各手続の要領を記載した「特別土地保有税申告の手引」と題する小冊子を作成し、これを申告用紙とともに同税の納税対象者にあてて送付したことも認められ、右認定を覆えすに足りる証拠はない。

結局、原告がその主張のように昭和五四年六月ころまで、本件特例譲渡についての認定申請手続について知識を、仮に欠いていたとしても、申請書の提出が遅延したことについては、少くとも原告の過失によるものというほかはないから、前記の「やむを得ない事情」があつたとは到底認め難いものというべきである。

4 そうすると、被告は、本件特例譲渡についての認定申請書の提出があつた昭和五四年八月二八日前の日を納税義務の免除に係る期間の起算日と定めることは許されないから、結局原告は特別土地保有税に係る徴収金に係る納税義務の免除を受けることはできず、したがつてその前提としての特例譲渡についての認定を受ける利益を有しないというべきである。

したがつて、被告がした本件各土地について、特例譲渡についての認定をしない旨の処分には、原告主張の違法はないことが明らかである。

(菅原晴郎 寺尾洋 安間龍彦)

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